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奈良地方裁判所 平成6年(わ)401号 判決

本店所在地

奈良県生駒郡斑鳩町阿波三丁目一〇番二二号

せんだん書林株式会社

代表者

野畑徹

本籍

奈良県生駒郡斑鳩町龍田三丁目三一〇三番地の一

住居

奈良県生駒郡三郷町信貴ヶ丘三丁目七番八号

会社役員

野畑徹

昭和二二年五月九日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官水沼祐治出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人せんだん書林株式会社を罰金八〇〇〇万円に、被告人野畑徹を懲役二年に処する。

被告人野畑徹に対し、この裁判確定の日から三年間右刑に執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人会社は、奈良県生駒郡斑鳩町阿波三丁目一〇番二二号に本店を置き、教科書取次供給販売及び学習塾経営等を業とするもの、被告人野畑は、同会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括するものであるが、被告人野畑は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、同会社の売上の一部を除外する方法により所得を秘匿した上、

第一(公訴事実第一)

平成二年四月一日から同三年三月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二億七一四二万五一三〇円で、これに対する法人税額が一億八八万五九〇〇円であるにもかかわらず、同三年五月三一日、奈良市登大路町八一番地奈良合同庁舎所在の所轄奈良税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一三七九万六八〇一円で、これに対する法人税額が四二七万五〇〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額との差額九六六一万九〇〇円を免れ、

第二(公訴事実第二)

平成三年四月一日から同四年三月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二億五四二〇万六二二〇円で、これに対する法人税額が九四五〇万二二〇〇円であるにもかかわらず、同四年六月一日、前記税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一二〇二万六四九六円で、これに対する法人税額が三六八万四七〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額との差額九〇八一万七五〇〇円を免れ、

第三(公訴事実第三)

平成四年四月一日から同五年三月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二億一〇四四万四七二三円で、これに対する法人税額が七八一三万七九〇〇円であるにもかかわらず、同五年五月二八日、前記税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が九一二万八二九八円で、これに対する法人税額が二六四万四四〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額との差額七五四九万三五〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

第一回公判調書中の被告人会社代表者野畑の供述部分及び被告人会社代表者野畑の当公判廷における供述のほか、判示各事実(これに付記した各対応公訴事実)につき、検察官請求に係る証拠等関係カード記載の公訴事実の別に従い、同記載番号1ないし43、45、47ないし70のとおりであるから、これを引用する。

(法令の適用)

判示各所為は法人税法一五九条一項(被告人会社については更に同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社については情状により同法一五九条二項を適用し、被告人野畑については所定刑中懲役刑を選択することとする。そして、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内において罰金八〇〇〇万円に、被告人野畑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において懲役二年に処し、被告人野畑に対し同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人会社の代表取締役である被告人野畑が、借金返済や塾教室の用地確保などの資金を作るため、被告人会社の売上のほとんどを占める塾売上の一部を除外し、仮名又は借名預金の形で留保するなどの不正手段を用い、平成三年三月期から同五年三月期までの三事業年度において、実際には七億三六〇七万円余りの所得があったのに、七億一一二万円余りの所得を隠して、三四九五万円余りの所得しか申告せず、二億六二九二万円余りを脱税したもので、通算ほ脱率は約九六・一二パーセントに及んでいる。こうした犯行の罪質、動機、態様、規模などにかんがみると、犯情はよろしくない。他面、被告人会社は本税及び重加算税等の国税及び地方税の納付を終えている上、本件による社会的制裁も被告人野畑ともども大きかったことが認められる。加えて、被告人野畑は本件のごとき反社会性、反倫理性を含む行為に至ったことを深く反省し、その背景となっていた被告人会社の同族会社的体質からの脱皮を図るとともに、教育産業に携わる者としての社会的責務の自覚を深めていると思われる。その他諸般の事情を勘案の上、右のとおり刑の量定をした。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木正義)

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